DAISUKE SASAKISOUTH WEST WALL OFDENALI

SPECIAL INTERVIEW

“偉大なる”冒険のあとさき

2017年6月、アラスカ・デナリ山にて人類の冒険史に新たな1ページが刻まれた。
アルパインクライミングの難ルート「カシンリッジ」登攀と、
標高6,000mを超える絶壁「南西壁」でのスキー滑走を組み合わせるという大冒険。
今まで誰も思いつかなかった、いや思いついても挑もうとすら思わなかった計画だ。
体力、精神力、技術、経験、計画、装備、仲間。
今までの人生、すべてが試されるような冒険を成功させたばかりの佐々木大輔が語る、
アラスカ・デナリ遠征の一部始終をご覧あれ。

佐々木大輔

佐々木大輔

1977年北海道札幌市生まれ。ジャパンエクストリームスキー大会優勝、ビッグマウンテンスキーワールドツアー・フランス大会準優勝などコンテストで活躍する一方、マナスル7400m地点からのスキー滑降、利尻岳西壁、南稜〜東壁滑降など、冒険スキーヤーとしても数々の偉業を残している。国際山岳ガイド。

「この2年、デナリ山に向けたトレーニングと
準備を少しずつ地道に積み重ねていきました」

「すっかり抜け殻状態でしたが、やっと通常運転に戻ってきましたよ」

梅雨が明けたばかりの渋谷駅前。真っ黒に日焼けした佐々木大輔が、大粒の汗を拭いながら待ち合わせ場所に現れた。目の前の男が数週間前に偉大な遠征を成し遂げてきたことなど、大都会の駅前を忙しなく行き交う人々は知る由もないだろう。

時計の針を数週間前に戻してみよう。彼は強風が吹きつける-30℃という極限のコンディションの中、アルパインクライミングの難ルートとして知られるカシンリッジを攀じり、標高6,190mの頂を目指していた。挑戦の場に選んだのは、少年時代から憧れの人である植村直己が消息を絶ったアラスカ・デナリ山。スキーを自ら担ぎ上げ、断崖絶壁のデナリ山南西壁を滑走することが目的だった。

前人未到のこの計画が動き出したきっかけは、さらに数年前へと遡る。
「じつは、あのあたりを滑ろうという計画は、5、6年前に山岳ガイドの加藤直之さんから持ちかけられていました。その時はまだ成功できるイメージがなくて、返事を濁していたんです。それから数年後、利尻島の滑走を撮影したNHKのディレクターから、また何か一緒やらないかという話をもらいました。その時に僕が一番やりたかったのは、チベットの山を滑る計画。もうひとつは、國母和宏と佐々木明のオリンピアン2名とアラスカを滑る案。3つめに実現度は一番低いけれどデナリ山の南西壁を滑ること。この3つを提案したんです。しばらくして、『デナリの件、企画が通りました!』と連絡が届きました。提案したなかでもっとも厳しい、チャレンジングなルートが選ばれたわけです」

いざルートと斜面を調べ始めてみると、とにかく情報がない。今回目指すルートは、アプローチにクレバスや雪崩が多い氷河を通ることから、今までそこに挑んだ登山者の数が極端に少なかった。無理もない。スキーを背負ってカシンリッジを登って滑ることができれば、人類初となる快挙だ。

いきなり行っても成功する確率は低いだろうと見た佐々木は、昨年の6月、現地へと偵察に向かった。
「大まかな情報は写真で得ていましたが、斜面全部が写っていなかったり限界がありました。実際に現地に見に行ったのは大きかったです。そこでだいぶ滑るイメージが湧きました。結果、滑る雪のコンディションも考えると、6月がベストな時期だろうと目処を立てました」

いままで佐々木は、グリーンランドやパタゴニアなど世界各地で仲間と共に登攀と滑りを組み合わせた遠征を成功させてきた。そのスタイルは、あらかじめ特定の斜面を目指すのではなく、仲間たちとその場で滑りたい斜面を見つけて楽しんできたことが特徴的だ。しかし、今回のデナリ遠征はあらかじめ目標とする斜面を設定してのもの。これまでの遠征とは、準備の段階から明らかな違いがあったそうだ。
「下見から帰国したあとは、目標がある程度定まったので、そこに向けて準備を整え始めました。今までの遠征は僕ら自身が楽しむためのものだったので、出発前に特別なトレーニングはしませんでしたが、今回の遠征は現状の能力だと実現が難しいだろうと感じていました。より目的を絞って、想定される技術や体力面の強化が必要でした。とくに、カシンリッジを想定したクライミングのトレーニングを少しずつ地道に積み重ねていきました」

装備や食料計画の準備も、ルートを想定して進められた。アイススクリューはすべてアルミ製の軽量なものに買い換えた。カラビナもすべて軽く、使い勝手のいいものに変更し、重さと設営スペースを考えてテントも細部までアレンジを加えた。スキーやザックはデナリ用にしてもらった。
「持っていく装備はかなりシビアに選びました。妥協せず、使っていて安心できるものを持っていきたかったんです。標高が高いところでは、食料計画もすごく大切です。遠征はメンバーも大事だけど、メンバーがよくてもご飯がまずいと雰囲気が悪くなる。今回はベースキャンプには圧力鍋を持ち込んで米を炊いて、カレーやハヤシライス、あとはペミカンとかを食べていました。より高いところでは、アルファ米とフリーズドライ。フリーズドライは北海道の『極食』のものです。カシンリッジの登攀中に食べるために、メンバーそれぞれの奥さんが作った食事もフリーズドライ化してもらった。ちなみに佐々木家のオリジナルは、ツルハシのキムチを使った豚キムチです」

こうして一歩一歩山を登るように、2年間という長い時間をかけて少しずつだが着実に、デナリ山南西壁滑走を実現するための準備は進められていったのだ。

「予定では2泊3日で壁を抜けるはずが、
4泊5日かかってしまったのは想定外でした」

2017年5月。現地に着いた遠征隊は、まずデナリ山登頂のメジャールートであるウエストバッドレスから山頂を目指した。2週間かけ、高度順応を兼ねての登頂である。
「実は山頂に一度立ってしまうと、気持ちが切れてしまうのではないかと不安がありました。でも、僕らの目標はカシンリッジを登って南西壁を滑ること。17年前に初めてデナリに登頂した時は登って下りてくるだけで燃え尽きてしまったのですが、モチベーションは途切れるどころか高まりましたね」

一旦下山してからは、2,200mに設営したベースキャンプで10日ほどたっぷり休憩を挟んだ。計画では3日休んでから天候を見て再アタックする予定だったが、悪天候が1週間続き、最後の3日間は雨が降った。
「この時、上部で60cm以上の降雪があったことは想像し切れていませんでした。そのせいで、アタック時は途中から腰ラッセルになり、予定では2泊3日で壁を抜けるつもりが、結局4泊5日かかってしまったのは想定外でした」

極限まで荷物を絞ってはいるが、スキーを含めた荷物は20kg近く。気温は-20~30℃。ただでさえ難所として知られるカシンリッジの攻略は、降り積もった新雪と強風に阻まれ、行動時間が15時間にも及ぶ日もあった。

加えて、滑走が最終目的であることが、登攀計画を一筋縄ではいかないものにしていた。南西壁は昼間に光が当たった後に日陰になると、一旦溶けた雪が氷へと変わる。ある程度、光が当たって雪が緩んだ状態、かつ陽射しが陰って凍る前の状態でないと滑ることはできないのだ。つまり、滑走するためには斜面に陽が当たる時間、12時から午後4時までの4時間が勝負となる。
「結局、滑走日に晴れていないと意味がないわけですよ。早く登り過ぎてスタート地点近くの高所で天気の回復を待ってしまっては、体がどんどん消耗してしまう。スタート地点まで抜けられるギリギリの場所に待機しつつ、悪天候をやり過ごす必要があった。早い時間に抜けすぎてもダメ。けれど、お昼前には滑走準備を始められなきゃならない。この時間調整が結構きつくて、体力的にも、気持ち的にも難しかったところです」

「頭がいっぱいになってもいけない。
滑りだけに集中しすぎないように意識するんです」

アタックから5日目。悪天候の合間を縫って5,600m地点から出発し、昼前に山頂直下6,100m地点のドロップポイントへと辿り着いた。休む間もなく、滑降への準備を整える。カシンリッジを抜けた時の達成感は、さすがに大きかったと言う。そこから、最大傾斜50°を超える大斜面の滑走に向けて、気持ちを作り直す難しさとはいかほどだろう。
「スタート地点に立った時には、自分はここを滑るための経験もスキルもあるのだと自信を持つことが大切です。あとは自分の精神や体の状態をきちんと把握できているかを考えます。スタート前に不安を噛み砕いて、心をしっかりコントロールして落ち着かせる。不安や違和感を感じるうちはスタートは切りません。これは、時間をかけて身につけてきた僕なりのやり方なんです」

滑り込んだ斜面は、想定していたよりも氷の斜面が多く、カリカリのアイスバーンだった。さらに登り始めから降った大雪が、コンディションを大きく変えていた。
「結局は、出発する前からああだこうだ言うことよりも、行ってみてその時の自然の状況にいかに対応するかが重要でしたね。斜面が凍っていないか、岩が隠れていないか、雪崩は大丈夫か。ひとつ失敗した時、ふたつ失敗したときのリカバリープランを考えながら滑りました。でも、考えすぎて頭がいっぱいになってしまってもいけない。滑り始めてからは、滑りだけに集中しすぎないように意識します。滑りにのめり込みすぎると足下さらわれてしまう」

上部の緩斜面には前日までのパウダースノーが降り積もっていた。スタート前には、経験上、雪崩の影響で下部の急斜面に氷の面が露出している可能性もあると考えながら滑り込んでいったそうだ。予想通り、下部の急斜面は雪崩の影響で切れており、佐々木はトラバースすることで危険な氷の面をかわした。しかし、後続のメンバーがその氷の斜面に滑り込んでしまい、数十m滑落。膝の靭帯を断裂する大怪我を負ってしまう。
「不幸中の幸いだったのは、氷の面にうっすら雪が乗っていたことと、ストックにピッケルを縛り付けていたのでそれを突き立てて止まることができたこと。そこで止まれなかったら、下は数十mの崖でクレバスも口を開けていた。とにかく、生きていてよかったですよ」

結局、その日の滑走はそこまでとなった。

天候が回復した翌日。佐々木は見事、残りの南西壁を無事に滑り降り、今まで誰も成しえなかった快挙をやってのけた。

「とことん楽しむためならば、
一人より仲間と冒険する方がいいでしょ」

「怪我人が出なかったら大成功だったけど、まあみんな生きて帰れたので遠征としては成功でしょう。今年で40歳になって、体力的には劇的に落ちてきているし、瞬発的な判断力のスピードも落ちてきています。でも、ゆっくりの判断力は厚みが増してきている。今までの経験をフルに活かしたからこそ、今回の挑戦を成功させることができたのかな。若い頃ではなしえなかった挑戦だろうと思います」

未知の冒険に必要なのは、体力、精神力、技術、そして経験のバランスだと言う。体力がなければ、せっかくの精神力や技術は活かせない。しかし、体を動かし続けるには精神力がものをいうし、正しく体を動かすためには技術が必要となる。体力が落ちても、積み重ねてきた経験で補うことで、まだまだ未知の冒険に挑戦することはできるのだ。

彼にとって、未知の冒険に挑戦し続ける原動力とはどこにあるのだろうか。
「本能に従ってこうなっているだけで、それを言葉にするのは難しいですね。ただ植村直己さんの本を読んでアウトドアの扉を開いた子供の頃から、ワクワクドキドキを追い求めているのは変わりません。それが山登りだったり、スキーだったりするだけなんです。今、自分が生活の糧にしている山岳ガイドっていう仕事も、お客さんにとってのワクワクドキドキを提供する仕事だと思っています。リスクがあるチャレンジをどう安全にマネージメントするか。僕にとって挑戦することは、遊びでもあり、永遠の仕事でもある。その人がやりたいとさえ思えば、挑戦することっていつでも開かれているんです」

最後にひとつ意地悪な質問をしてみた。彼が憧れる植村直己といえば、単独行者の代名詞。なぜ、佐々木は一人で挑戦する道を選ばずに、仲間と挑戦する道を選ぶのだろうか。
「実はあまり一人で登るのは好きじゃないんですよ。究極で言ったら冒険は単独行なのかもしれないけれど、仲間と冒険する方が圧倒的に楽しい。山ととことん対峙するなら1対1なのかもしれないけれど、山をとことん楽しむならば仲間と行く方がいい。楽しくないでしょう、一人で山に行っても」

植村直己は、『冒険とは生きて帰ること』との哲学を持っていた。敬愛する冒険家の考えに『仲間と共に楽しむこと』を加えた形こそ、佐々木大輔ならではの冒険のスタイルだろう。その魅力に惹かれ、彼の元にはいつもたくさんの仲間が集まる。仲間たちと共に冒険を楽しむ気持ちが続く限り、未知を切り拓く彼の挑戦はまだまだ続いていく。

過酷な挑戦の相棒に佐々木が選んだのは、ノルウェーのアウトドアブランド「NORRØNA」。1929年の創業以来、ノルウェーの厳しく過酷な自然環境下で研鑽を繰り返して生み出された屈強なギアが、前人未到の挑戦を力強くサポートした。佐々木が持ち帰ったフィールドレポートを基に、ノローナもさらなる進化への挑戦を続ける。

すべてのノローナの製品は、世界レベルのクライマーや山岳ガイド、ビックマウンテンスキーヤーといったプロによってテストされ、アウトドアのあらゆる環境下でも対応する最高峰のウェアやギアを提供しています。彼らが製品に満足することができれば、どのアウトドア分野でも機能を発揮し、世界中のアウトドア愛好家からも選ばれると確信しています。

Ski and Snowboarding

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ノルウェーが誇るロフォテン諸島の感動的な自然美を楽しむために、何度もテストを繰り返されたバックカントリーシリーズです。lofotenは高い耐久性、最先端の機能性を可能にしたアウトドア界が誇るべきコレクションです。

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崖のようなアルパインを登り、ピークから滑降するためのアイデアが詰まった、軽量性と伸縮性に優れたlyngenシリーズ。アルパインでクライミングからスキーまで対応する防風性、透湿性、柔軟性を持ち合わせています。

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ノルウェー北部に位置するパウダーエリア、tamokからインスピレーションを受けたコレクションです。ミリタリールックと最新のゴアテックス技術を採用し、斬新で独特なデザインながらも、バックカントリーフリーライディング激しい動きとノルウェー北部の厳しい気候に対応できる優れた機能性を備えています。

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フリーライドの世界を広げる為に、røldalはバックカントリーの機能性にアーバンデザインを掛け合わせたシリーズです。

Back Country Lightness

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Mountaineering

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クライミング、ロングルートトレッキング、ハイキング、どこへ行こうとfalketind シリーズは、例え悪天候の中でもあなたのチャレンジをサポートします。

trollveggentrollveggen
Gore-Tex Pro Jacket

ノルウェーが誇る1000mクラスの北壁トロールヴェゲンの名がついた、アルパインクライミングシリーズtrollveggenは困難な環境下でもクライマーをサポートするため、Norrøna最高峰の耐久性と機能性を誇ります。

Back Country Lightness

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